「フルートってどんな音がするの?」「私でも吹けるか心配……」
という方のために、フルートのことを少しだけ説明します。
フルートの歴史ー実はフルートってリコーダーだった!?
今の日本で「フルート」と言われるのは、銀か金でできていて横に構えて吹くものを指します。
しかしフルートの元になるのは、実は縦笛。今のリコーダーのような楽器でした。私がフランス留学中、「フルートを勉強している」とフランス人に話すと、「トラベルソ?」と聞かれることが多くありました。この“トラベルソ“というのはで“横“という意味で、普通の「フルート」と言ってしまうと縦笛だということになるのです(正式にはFlute bac)。
それからFluteという言葉は細長いという意味なので、シャンパングラスやバゲットよりもう少し細いパンもFluteと表記されています。
モーツァルトはフルートが嫌いだった!?
縦笛時代から多くの改良を重ね、J.S.バッハ(1735ー1782)の時代には横向きのフルートとなり、この当時のフルートのために書かれた作品は、今なお演奏され続けています(偽作の説がある作品もあります)。
しかし横向きのフルートであっても、穴が開いているだけなのでリコーダーやオカリナのように指の腹でしっかり穴を塞がないと、息が漏れてしっかしりとした音がならない不安定な楽器でした。
余談ですがモーツァルト(1756ー1791)はフルートのために数曲つくりましたが、音が不安定でフルートが嫌いで、仕事のため仕方なく作曲したという話が有名です。モーツァルトが現代のフルートを知っていたら、嫌いにならなかったかなぁなんていつも思います。
それから徐々にキィ(楽器の穴を塞いだり開けたりするための、金属製のボタンのようなもの)をつけるようになり、半音階(♯や♭)が演奏できるようになるのです。
フルートの大改革時代!
そして18世紀、フルートに大きな転機があります。ドイツ人のテオバルト・ベーム(1794ー1881)により、フルートの大きな改革が行なわれ、現代のフルートのカタチに近いものが生み出されます。まず音を大きくするために穴を大きくしますが、それだと人間の指では塞げないのですべてにキィをつけます。そして音階のバランス(これはすべて音程を数値で表した、文系の私には理解不能な話です)などすべてに改良に改良を重ね、今のフルートができあがります。
私は以前、日本や海外で活動するフルート職人さんのインタビューをシリーズでしていましたが、このテオバルト・ベームの著書「フルートとフルート奏法について 音響学的、技術的、芸術的観点から」の本を持っている方とたくさん出会いました。100年以上も前に発表されたテオバルト・ベームの理論を今なお継承しているのです。また、この理論はクラリネットやサックスにも使われています。
フルートの音はどうやって出すの?
フルートの音の出し方は他の管楽器から比べるととても特殊です。トランペット、トロンボーンなどの金管楽器すべては唇を震わせてマウスピースで吹く。クラリネット、サックスは葦でできたリードを震わせて音を出す。オーボエ、ファゴットはダブルのリードです。しかしフルートは仲間がいないのです。
フルートの吹くのを他で例えると、ビンの口に息を吹きかけて音を出すのと似ています。だれもが一度はやったことがあるかと思いますが、あれは息の強さ、角度、そしてビンの中にどれだけ水が入っているのかで音が大きく違います。
フルートは息が直接音になる楽器なので、歌うことに近く、吹く喜びは他の楽器より秀でてあると思います。
誰でも音が出せるの?
人の唇は十人十色。人によってはすぐに音が出せる唇をもっています。実は私はフルートにはあまり適さないといわれる唇の形でしたが、吹奏楽部で様々な楽器体験をしたときに、音が鳴ったのはフルートだけでした。
私は誰でもフルートの音は出せると思っています。フルート普及啓蒙活動で子どもたちにフルートを体験してもらうとき、子どもでもわかりやすいように説明して音の出し方を教えます。例えば「手を温めるような暖かい息をだしてごらん」とか、「スイカの種を飛ばすイメージをもって」などと、日常生活でフルートを吹く口になるようなときの説明をしながら吹いてもらうと、なかなか音が出せない子でもできるようになりました。
音が出せたときの喜びを忘れないようにするのも大事で、音階ができなくてもひとつの音だけで簡単な曲ができるように結びつけます。
ズバリ、フルートの魅力は!?
私自身フルートに出会って10年以上経ちますが、他の楽器に移りたいとは一度も思ったことがありません。フルートは息が直接音になる楽器なので、まるで歌っているかのような喜びがあります。透き通ったキラキラした高い音。まさに管楽器の花形です。そしてテオバルト・ベームさんが改良してくれたメカニズムのおかげでヴァイオリンやピアノのような速いパッセージも吹けます。また、フルート2本以上で一緒に演奏すると、とても素敵な響きに包まれます。
それからちょっと現実的な話をしますと…、楽器がとても軽い! 管楽器の中で一番ポピュラーと言える楽器なので、楽器の種類・メーカーも豊富で楽譜も様々なジャンルのものがそろっています。
私はフルートという楽器が大好きです。この気持ちを多くの人にも味わってほしい。そう願っています。
実際に聴いてみよう!
フルートの音色が実際どんなものか、下記から聴くことができます。
フルートはクラシックからポップス、ジャズ、ボサノバ、演歌まで!どんなジャンルの曲でもバッチリ合う音色を持っています。 体験・見学にいらした方にはフルートの演奏をお聞かせします。
フルートの演奏動画